病(パーキンソン)との戦い
 医師から、パーキンソン病です! と告げられたのは、2年前の私が51歳の時であった。『どこかで聞いた病名だなー・・・もしかしたら、難病かも・・でも、治療すれば治るんでしょう』なんて、いくつもの病を乗り越えてきた私は、この病をいとも軽くその時は思い、まったく難病というものをあなどっていた。

 もう随分ながい間疲れやすく、体がだるい、特に体調の悪い時は自転車に乗っていて、普段”すいすい”自転車のペダルを踏んで通り過ぎる所で転んだり、歩いている時によくつまずいたりした。部屋の中でも段差や柱に足の爪先をぶっけて、ギブスをしたこともある。

 これらの事は、全て”せっかちな”自分の不注意と思っていた。ところが、”何か変だなー”と感じるようになった。朝、目が覚めると同時に胸が苦しく、汗が”どー”と吹き出す。私の年齢では、時々”かーっ”と顔が熱くなって汗が出る。

 私の場合は、それに加えて”いやだなー””苦手だなー”と感じる人の前で話をする時も、汗が”どー”と吹き出す。しかし、知らない人の前では、ごく自然にいくらでも会話ができる。大勢の前でも同様です。又、友人とか、幼なじみは、もっとリラックスして会話は楽しい。

 お茶する時、”いやだなー””相性が良くないなー”と感じる人の前では、緊張して手が震えてコーヒーが飲めなくなる。相手と一対一とか数人の場合に、どうも頭を左右に振っているらしい。(私がパーキンソン病であることを告白した後、手も頭も震えているよと言われる。)包丁で一生懸命、野菜を千切りにしている時、子供が「お母さん・・今、震度2だよ・・」と言う。

 手先の小さな震えは、30代の後半にはあったような気がする。このような症状を自分が意識し、気にするようになったピーク状態の頃、人間関係において今まで味わった事の無い恐ろしさを約1年間経験した。

 それから、自分がいる場所・・自分の存在感が無いように感じた。ひどい時は、自分が、今、寝ているのか、起きているのか、夢を見ているのか、又、現実なのか、錯覚しそうになった。

 もともと私は頭のチャンネルの切り替えが下手で、今まで気分転換する心の余裕も、持ち合わせていませんでした。気になる事があると、長い間ひきずっていってしまう。

 30代の子育てと、サークル活動、夫の仕事と、忙しい頃、胃腸をよくこわし、薬を長期にわたって服用するようになる。夫の、転職、転勤、会社経営などなど。食欲は無い、胃腸は悪い、結構たくさんの種類の薬を服用したように思う。一度、目が急に見えにくくなったことがある。すぐ、胃腸の薬を、中止するように言われ止める。

 痛みは5年位前から始まり、最初は右ひじ、右肩それから1年位すると、ほとんど一度に両ひざの関節の痛みと、ふくらはぎがつっぱる感じ。ひざから下は、びりびりする。それは冷えているのでもなく、しびれているのでもない。『しびれているのかなー』と思って、指でつねってみたが”ちゃん”と痛い。

 Lドーパが効いている時は、首、肩のこり、ふくらはぎのつっぱり、びりびりがなくなる。しかし、じっとしてると、ひざの痛みはとれない。特に、夜、寝るときは、痛みが少し強いように感じる。

 私は自分なりに、”少しでも食欲がでるよう””足が悪くならないよう””自然に接するよう”心掛けることにしました。

 バスツアーの日帰りです。町はかえって疲れるので、ハイキングのようなかたちの軽い山や草原。バスの場合は、行きも帰りも座席に寝転んでいる。首と腰のヘルニアもあって、まともに長い時間座っておれないからです。

 自分の住んでいる所から遠く離れると、まず、自分という存在がよく見えてくる。そうして、今日一日は私一人のもの・・・自由を得た思いがします。言われた時間までに、バスの所まで帰ってくればいいのですから・・・・・。

 もちろん周りは、皆、知らない人達ですから、気を使うこともありません。風の肌ざわり、空気の味、行く所、行く所で全く違う。嬉しくて、又、心がはずんで、ブナ・コシアブラ・コメツガ・クロベの大木にさわって、生命力を頂いたような、とても新鮮で元気を分けてもらったように思う。

 何キロか歩くこともありますが、疲れて明くる日、ダウンすることはありません。もちろん、無理して歩いたりは致しません。自分の体力と、足と、時々相談しながらです。Lドーパは家にいる時と、同じ量を服用しています。

 山に行くと、胃の調子も良く食欲もでます。ですが、十日も家にいると、元のもくあみになってしまいます。ですから出来るだけ、今は山に行きたい。山に魅せられています。いろんな演劇や音楽鑑賞に行きましたが、感激するとかえって疲れます。テレビで、(笑点)落語を見ることがある。とても楽しい!!食事も美味しい。私のおなか(胃腸)は、とても気分屋さんなのですね。

 家にいて通常に薬を服用していて、薬の効き目があまり良くない時があります。このような状態がながびくと、頭の中(気持ちも)パニックしそうになります。ですからパニックにおちいる前に、何か行動するようにしています。(せざるおえないのです。だって、本当に発狂しちゃう・・・・・・)

 いつも何時も、自分の体と気持ち(心)を、コントロールしなければならない。私は自分をコントロールするのが、私の仕事だと思うようになりました。本当に重労働です。だって一日も、いえ半日も、365日、体のことと薬にベッタリ、いつの間にか自分に対して、”超”過保護になってしまいました。

 子供にも過保護、自分には、”超”過保護! ですから思いついたのが →→→ 遠くの山へ行くことでした。山に行くと転ぼうが、どうなろうが、気分はまるで子供そのもの。(まるで、アルプスのハイジーなのです)♪♪♪♪♪

 本当のところ活字にすると、”すごーく”恥ずかしいのですが、アルプスのハイジーの歌を、口をとがらして歌い、口笛ふいてつまづきながらも、スキップしたのであります。

 冬がきたら・・・どうしよう・・・なにか・・・山にかわるものないかしら・・・。きっと、見つけます・・・なにかを!!!