第1章 競馬とは何か?

 競馬をスポーツだと言う人がいる。4角を回った馬たちが、一斉にラストスパートをかける。サラブレッドたちの奏でる怒涛(どとう)の響きに、自らの胸も早鐘を打ち、それこそ贔屓(ひいき)の馬と一緒に、ひたすらゴールを目指す。手のひらにはいっぱいの汗。めくるめく感動。
 これをスポーツと言わずしてなんと言うのか……。

 まあ、競馬=スポーツなどという人の言い分は、大体こんなものだろう。僕は別に否定はしない。人それぞれ、それこそ千差万別な競馬への思い入れがあって当然である。
 だが、こういう人に限って、馬券が取れなかった時は、グチグチと買った馬やジョッキー、ひいては競馬評論家などに悪態をつくことが多い。それこそ、スポーツマンの持つ爽やかさ、潔さなど、微塵も感じられない。
 僕は競馬をスポーツなどと思ったことは一度もない。まして、推理のゲームだとか、あるいは暇つぶしだなどと、ある意味「賭け事をしているという罪悪感を薄めよう」とする言訳めいた言動をしたことは一度もない。
 はっきり言おう。競馬はギャンブルであり、ギャンブル以外の何物でもない。このことを常に頭の片隅においておかないと、いつか大きな罠にはまる。
そして、一度しかない、かけがえのない人生を棒に振ってしまう。現に、僕は今までにそんな人たちを何人か見てきた。
 何をどう飾ろうと、どう言い繕うと、「競馬はギャンブルであり、博打である。」ただ馬が走っているのを見て、美しいと思う人はいるだろう、もちろん、僕もその一人である。だからと言って、いつもいつもそれだけでは、そのうち興味を失ってしまう。
 ほんの少しでも、お金がかかっているからこそ、馬が走るのは楽しいのである。実はここが肝心なのだ