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          人間は、大きな課題に直面した時よりも、小さなストレスが増大しながら押し寄せてくる状況に 
          弱いらしい。 
           それを教えてくれるのが、「クラリネットをこわしちゃった」という歌である。作詞者は不詳で原 
          曲はフランス民謡らしい。 
           「僕のクラリネット」はパパからもらったクラリネットである。だから、この歌の長い歴史から、ヤ 
          マハ製のクラリネットではなく、クラリネット発祥の地のフランス製の銘器だと思う。少年もその クラリネットを「大好き」だと言う。この家は、クラリネットを相伝してきた家元的な家庭なのかも しれない。その大事なクラリネットの音がドの音を始めとして徐々に出なくなってくる。 
           その時の少年のストレスを考えるに相当なものがあっただろうに違いない。最後にはシの音し 
          か出ないクラリネットを少年は超前衛的なフリージャズのように延々と吹き続けるのだろうか? 不気味である。しかし、「どーしよう、どーしよう」という極限的精神状態の直後に少年は♪オー パッパラマオと素晴らしい開き直りの精神で陽気に歌う。 
            どん底を知った者のみが知り得る明るい境地なのかもしれない。初試合がスコア上はどん底 
          であったなんちゃってヤンキースに求められるものの一つが、このような素晴らしい開き直り 
          の精神である。あの試合以下はないと思えれば、初戦が大惨敗ということは最高の結果であっ 
          
          た。       
          
            2005年1月19日 負け惜しみを込めて ケアレ・スミス記す 
          
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