2_2.妻の病状、一段と進む
 寒くなるにつれ妻の病状も大分進み、手の震えも段々と強くなり、また首の筋の硬直が出て来て、首が右に曲がったまま身動き出来ず、ただ「お父さん、首が痛い、首が痛い」と訴えることが度々ありました。見ていてもその苦しさがこちらに伝わって来ますが、可哀想でも、どうすることも出来ませんでした。また足の硬直も始まり、発病当時は、親指が上の方に曲がっていましたが、最近では両足の指が拳を強く握ったようになり、日を増すごとに回数が増えて来ました。

 当時は三月(みつき)に一度、武蔵病院で診察を受け、後は地元の病院で薬を頂いておりました。武蔵病院の診察の予約日が来ましたので、診察を受け、妻の病状を細かく話し、先生のご指導を仰ぎました。先生は「それは困りましたね。首が硬直したり、足が硬直するのは薬の副作用ですね。奥さんは薬の量が多過ぎます。1日3回ぐらいが理想的ですが、1日に5回は少し多いですね。今、これに勝る良い薬がないので、様子を見るしかないでしょう。この薬は麻薬みたいなもので、飲むと気持ちが良いから段々と量を増やしたのでしょう。これ以上増やしては困るから、次回からは月に一度は必ず診察に来なさい」と申されました。  その年は何とか過ごしましたが、寒さが増すにつれて体調も悪くなり、歩くよりも這う事が多くなって来ました。また夜などは薬が全く切れてしまいますので、寝たら最後、寝返りも出来ず、トイレなどは私が抱きかかえて用を足すようになりました。

 こんな事もしばしばありました。仕事の関係上、寝るのが12時頃になります。床に着き、うとうとしたら「お父さん、おしっこが出ちゃう。トイレに連れて行って」と妻に起こされた。何時もの事なので用を足させ寝かし着け、さて、ゆっくり寝られると、床に着きすぐ寝てしまいました。そしたらまた「お父さん、足が痛くてどうしようもない。足を少しさすって」と起こされた。時計を見たら午前2時半。一番熟睡している時に起こされたので夢うつつで体が中々動かず、暫くしてから妻の足を揉みほぐし「静かに寝ろ」と言い床に着きましたが、暫くは寝つかれませんでした。また何か声が聞こえて来ましたが、頭がボーとして何を言っているのか分かりませんでした。そのうち「お父さん、お父さん、ウンコが出ちゃう」。これは大変だと急いでトイレに連れて行きました。床に着きましたが、神経が高ぶり、すっかり目が覚めてしまいました。外が明るくなって来ました。夜中に3回も起こされたので、寝不足のせいか、その日は気持ちが悪く気分の悪い一日でした。

 (今、思い出しましたが、父の時はもっと大変でした。自宅療養している時も、こんなような事が3日続きました。その間、殆ど睡眠を取っていませんので、4日目は頭がボーとして嘔吐もあり、私の方が参ってしまいそうでした。こんな私を見かねて兄貴が「これではお前が大変だ」と急遽病院へ入院【1回目】する事になり、私も一安心いたしました)