ターンポジションの原点 階段下行


指導の心得として、「初心者にプルークボーゲンをさせてはいけません。」ということを理解しましょう。
なめらかな回転弧を描くためには、運動の習熟(体験量)が必要となります。初めて行う運動に「習熟度」を求めてはいけないのです。なめらかに滑ることを強要するのではなく、自らがなめらかに滑ろうとするトライを温かく見守りましょう!

階段登行で、斜面に立つことを覚えたら、【階段下行】を、たくさん体験してもらいましょう!
階段下行は、パラレルターンに必要な「ポジション」を習得するにも最適です。
「片足が短く、片足が長い」スタンスで、谷側の何も無いところに足場を作り、そこに体重を預けて左右の足にしっかりと荷重がかかります。
片プルークのスタンスに共通するバランスを習得することができます。ターンをしないうちからターンの感覚を身に付けられるのです。
斜面に慣れている人が行う階段下行

こちらは、「斜面に慣れている人が行う階段下行」の例です。
慣れているので、谷側の足をさらに谷側へ踏み出す量にあわせて、重心移動も同量行うことができます。(2つの動作が同調できています。)

谷側のスキーで体を支えることに習熟しているので、何もない未知の領域に、無造作に足を出すことができるのです。
初めて行う方は、そこが怖いところ!
「未知なこと」 に 「恐怖」を感じるのです。

別の角度から考察すると、常に両脚の間に重心がくるので、いつまでたってもプルークボーゲンから脱却できないかも、しれません。
しかし、これも習熟すると、シュテムターンへ発展させるカリキュラムを利用することが可能となります。


 

【階段下行の練習内容】
(写真をクリックすると拡大します。)

(1)リラックスして腰幅程度の広さのスタンスで斜面に横を向いて立ちます。 (2)まず、しゃがみます。 (3)その位置を保持したまま、谷側の足を浮かし、空中で「長い足」にします。
(1)リラックスして腰幅程度の広さのスタンスで斜面に横を向いて立ちます。 (2)まず、しゃがみます。 (3)その位置を保持したまま、谷側の足を浮かし、空中で「長い足」にします。

(4)その形を保持し、重力方向の真下にさらに、しゃがみます。 (5)重心を谷側の足に少し寄せます。谷側の長い足を起こしていくようにしながら、重心を谷側へ移動していきます。 (6)谷側の足でしっかりと体を支えれたら、山側の足を谷側の足に揃えます。元の高い姿勢に戻り、1歩斜面の下に降りています。
(4)その形を保持し、重力方向の真下にさらに、しゃがみます。山側の足〜腰〜肩を重力方向に揃えるようにして、山側の足を短くしていくと、谷側のスキーが雪面に触れます。

まだ、山側の足で身体を支えていて、谷側の足には荷重感がないところ。

しゃがんだ腰の高さを変えないように、少しづつ谷側の足でも身体を支えるようにします。2つの脚で自立できるところがチェックポイントです。
ここが、【プルークターンの原型】です。

(5)重心を谷側の足に少し寄せます。谷側の長い足を起こしていくようにしながら、重心を谷側へ移動していきます。 (6)谷側の足でしっかりと体を支えれたら、山側の足を谷側の足に揃えます。
元の高い姿勢に戻り、1歩斜面の下に降りています。

(1)からの動作を繰り返して、短い脚と長い脚の両方で体を支えることを覚えます。

時間と斜度に余裕があれば、逆向きになり、左右でも同じようになるよう、感覚を調整します。


アルペンスキーは、坂を下だり降りるスポーツですから、練習内容は、坂を下ることを、たくさん体験していただくことに尽きる、と思うのです。

階段下降で見られる両足荷重のポジションは、パラレルターンへ導く基本ポジションです。

左の写真は今日はじめてスキーをされた方で、初歩動作を小一時間体験していただてから、初めて斜面にデビューして10分後に、「中斜面を階段下行する姿」を撮影したものです。

「広いスタンスでパラレルターンをしているポジションですよ。」と説明しておきますと、初歩滑走の経験の中に「フォールラインを向いたところから、降りながら向きを変えていくところ(山回りの部分)で、先ほどの階段下降の時のポジションを当てはめてみましょう。」と少し難しい課題にトライしても、具体的に運動をイメージする(直線的な移動方向から、回転しながら移動する)ことができますので、2つの脚にしっかりと荷重した安定したターンが生まれ、片プルークのポジションがパラレルターンへ導いてくれます。
指導者は環境を整えてあげ、未来を見据えた体験と言葉を提供していくことで、受講生は短時間で上達していきます。個人差もありますので、焦らず、ゆっくりと見守りましょう!

まるで、ゆるい角付けの内足と、強い角付けの外足のように見えますね。

ターン中に使える片プルークのポジションと、ターン外足への荷重感を体得するには、階段下行が最適だと思います。
初めて斜面に出て、左右の足の高低差を感じながら、両脚で体を支えることを覚えることはもちろん、同時に、プルークターンからパラレルターンへと変化できる基礎も、最初の1時間で体験できるのです。

短い脚と長い脚を上手に使い、斜面でバランスを取ることを最初に習熟しながら、転ばずにリフト乗り場への移動することが、初歩滑走の目的となるでしょう。
滑り方の良し悪しでなく、トライ&エラーを繰り返しながらも、リフト乗り場に到着できたことを褒めてあげましょう!
滑走エリアが広がり、滑走本数が一段と増えていきます。
すると、学習者自らが動作を習熟していきます。ターン外側のスキーで体を支えることに習熟してきます。
そこで、内脚股関節の内転を少しだけ加えることを学んでいただき、短期間でパラレルターンへと導いてあげましょう。

(2013.12.31)
(2015.9.16)
(2016.1.26)

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