1_6.妻に薬の副作用、父の病状悪化
 この頃から、妻の体に少しずつ薬の副作用が現れ、首が痛い、足が痛いなどと頻りに言うようになりました。初めは首の筋が硬直し、首が右に曲がり身動き出来なくなり、涙を浮かべ「首が痛い、首が痛い」と訴える事が多くなって来ました。また顔が無表情になり笑顔が全くなくなり顔がこわ張って来ました。先生に相談したところ「今、使っているのは一番良い薬で、これ以上の物はないから暫く様子を見ましょう」と言われ暫く様子を見ることにしました。

 7月末の夜中、突然「炯雄!炯雄!おじいさんが変になっちゃった」と大きな声が聞こえました。急いで行って見ると、普段歩けないのにウロウロ歩いていた。「おじいさん何をしているの」と聞いたら「切符を落としたので捜している。そこいらに落ちていると思うから捜せや」などと変な事を言い始めました。その夜は宥めて寝かし、翌朝様子を見に行ったら、ベッドに寝ながら手に何も持ってないのにタバコを吸う仕草をし、うまそうにフワーと息をはいていました。これは順調ではないと思い、私の兄に連絡したら、私を含めて7人兄弟、1時間もしないうち全員、様子を見に来ましたが、父には皆が来た事も良く分かっていない様子でした。

 親族会議の結果「炯雄がみるのは大変だ。敬子の事もあるし、総合病院に入院させよう。その方が安心だ」と兄貴の一声で決まり、入院させる事にし、急遽救急車で行きました。「病室が満室で入院出来そうもないですね。もう一度よく調べて来ましょう」と言い残し、看護婦さんは行ってしまいましたが、幸いとでも言うのでしょうか、暫くして「これから退院する人がいるんですが、個室なんですけれどいいでしょうか」「良いも悪いもないです。是非お願いします」ということで、一先ず落ち着く事にしました。

 そして診察した結果「内臓の方は良いが、軽い脳血栓を何度もやっていますね。それと痴呆症が始まっておりますね。暫くお預かり致しましょう」と言って下さったので、先ずは一安心しましたが、結果的には良くならず、1ヶ月で退院をし、自宅療養を余儀なくされました。