2_5.鼻歌の私に世間は「苦労なしの楽天家」
 次男がお店を手伝うようになってからは、朝はゆっくり寝ていられ、かえって寝坊をする日が度々で母に「何時まで寝ているのだ。いい加減に起きろ」などと怒られたりしましたが、肉体的にも精神的にも非常に楽になりました。また気候も良くなり、ストレッチ体操が良かったのか、妻も大分調子が良いようです。

 秋の心地良い日の事でした。何時ものようにバイクに乗り出前に出かけました。「こんにちは、さくら家です。お待たせ致しました」と玄関をガラッと開けたら「さくら家さんは鼻歌を口ずさんで来るので、何処にいてもすぐ分かる」「ああそうですか。それは気が付かなかった。今度は静かに入って来ます」「でも、さくら家さんは何時もニコニコして苦労なしの楽天家でいいね。私も心が和らぐような気がする」と言われました。「毎度有り難うございます」と言葉を残し、バイクで帰る途中「世間では、そんな目で自分を見ているとは思わなかった。毎日大変辛い思いをし、苦労に苦労を重ねて暮らしているのに、たまには内面の自分を見て欲しいな」と思いながらバイクを走らせていました。

 後で気が付きましたが、大分前におばさんに言われた事をふっと思い出しました。「楽しい時、苦しい時、何時も鼻歌が出るような人になりなさい」という言葉です。すっかり忘れていましたが、いつの間にか歌を口ずさんでいる自分がおかしかった。しかし、おばさんは良い事を教えて下さった。これからも今の気持ちを持ち続けるよう心掛けて行きたい。遅まきながら、おばさんに感謝します。

 仲間達とよく飲みに行きますが、友達にもよく言われます。「桜木さん、奥さんの調子はどう」「そうね余り良くないね。そのうち寝たきりになるんじゃないかと心配している」。また近況を話したりすると「何時も朗かだから、そんなに苦労をしているとは思わなかった。桜木も大変だね」。楽しく飲む酒の席なので、話題を変え大いに楽しみ、家の事をしばし忘れ、心の疲れを癒す事が出来ました。